全日本選手権JSB1000クラスを戦う多くのチームにとって、1年に1回やってくる耐久レースが、鈴鹿8時間耐久ロードレースだ。
7月最終日曜日の午前11時半にスタートし、8時間後となる午後7時半まで、二人から三人のライダーで交代しながら走り続け、もっとも多くの周回数を重ねたチームが勝ちとされるこのレース。今年で41回を迎えるこの鈴鹿8耐は、8時間の中をどれだけロスなく走り続けるかが勝利のポイントとなり、そのロスを可能な限りなくすため、6月末あたりからテストが繰り返される。
MuSAHi RT HARC-PRO. Hondaの今年の鈴鹿8耐に向けた準備のスタートは、7月5日、6日の両日に鈴鹿サーキットで行われた車両メーカー、タイヤメーカーによるテストからとなった。

耐久レースのレギュレーションで、燃料タンク容量は24リッターと定められている。つまり、燃費によって自ずと1回の走行で周回できるラップ数は決まることから、テストではまずその燃費を確認し、1回の走行でどれくらいの周回数を重ねられるか、把握しなければならない。ピットインの回数が増えればそこでタイムロスするので、できるだけその回数は減らしたい。
現在の標準的ピットイン回数は7回。ほぼ1時間走り続け、ピットインして前後のタイヤを交換し、ガソリン給油、ライダー交代をしてまた約1時間走り続けることになる。こうして7回ピット、8スティントで8時間を走り切るには、大体28周前後は走り続けられなければならない。計算すると、燃費は大体6.77km/lあたりになる。28周を7回して196周。スタートして最初のスティントはコンディションによる燃費が厳密に読みにくいので、多少マージンを取って25周くらいでトップチームはピットに戻ってくる。現在のマシンレギュレーションでの最多周回数が、2016年に記録された218周。28周×7スティント+スタート直後の1スティント25周では合計221周なので、28周がクリアできていれば、現状のルール内での最多周回数となる218周は達成できることになる。燃費がギリギリではリスクが高いので、多くのチームが大体7.2km/lあたりの燃費をテストでねらってくる。できるだけエンジンパワーは落としたくないが、パワーを出すためにはたくさんのガソリンをエンジン内に送り込む必要がある。このあたりのバランスが、非常に難しいのだ。

さらに、前述したように8時間をロスなく走るために緻密な戦い方が求められるわけだが例えばその一つが、ピットに戻ってくるインラップ、さらにピットから出て行ってコースに戻るアウトラップの速さまでレース結果に大きく影響してくることから、気を抜いてピットに戻ってきたり、タイヤが新品だからと必要以上にスローペースで走るわけにはいかないのだ。
そのように、燃費、インラップ、アウトラップ、さらにはできるだけハイペースでのラップができるマシン作りというものを、テストの中で作り上げていかなければならない。しかも、1台のマシンを三人のライダーが交代して乗るわけだから、ライディングポジションやマシンセッティングの好みなど、お互いの妥協点も探らなければならない。

限られた時間の中でテストしたい項目は山のようにあるわけで、理想的には決勝と同じコンディションで可能な限りテストを行いたい。ところが、チームが参加した7月5日、6日ともに雨が降るコンディションとなってしまった。

本来であればレインタイヤを装着するわけだから、それに合わせたセットアップをしなければならないが、このテストの目的は鈴鹿8耐決勝に向けたもの。決勝日はほぼ晴れのコンディションとなることが予想されるため、バランスを崩さないようにドライ用セットアップにしたままレインタイヤを装着し、二日間のテストを走行することとなった。目の前のタイムよりも7月29日の決勝に合わせたマシン作りをしなければならないのだ。
今回のテストには、第1ライダーの水野涼、第2ライダーのドミニク・エガータ、ホンダ全体のリザーブライダーとなるランディ・ド・プニエの三人が参加した。

ドミニクは今回の事前テスト二日間しか決勝までの間に参加できない。そのため、ウエットながら、とにかくマシンに慣れてもらうよう、ドミニクを中心に二日間のテストは進められていった。
初日は9時から1時間、11時から1時間、午後2時15分から2時間の3セッションが行われた。MuSASHi RT HARC-PRO. Hondaは、1本目2’22.371で4番手、2本目2’21.598で7番手、3本目2’20.725で6番手となり、総合9番手でのスタートとなった。
二日目は9時から1時間、午後2時から1時間半の2セッションが行われた。チームは1本目2’22.995で9番手、2本目2’21.598で7番手となり、総合で9番手となった。

翌週の7月10日から三日間、今度は鈴鹿サーキット主催のテストが行われた。やっと夏日となり、ドライコンディション。スケジュールは初日が12時から45分間、午後3時15分から45分間、さらに夜間走行となる午後6時40分から1時間10分間の3セッションが行われた。

このテストにはパトリック・ジェイコブセン(以下、PJと表記)が参加。水野と2台のマシンを走らせることになった。

1本目は2’9.908で4番手、2本目は2’9.374で7番手、3本目の夜間走行は2’10.345で9番手、総合15番手で初日スタートとなった。
二日目は1本目9時55分から45分間、2本目10時50分から45分間、3本目午後3時45分から45分間の3セッション。
チームは1本目は2’9.352で6番手、2本目2’8.974で5番手、3本目2’8.280で、この日の総合は8番手となった。
三日目は1本目が9時から40分間、2本目10時50分から40分間、3本目14時から1時間30分の3セッション。
1本目2’8.771で5番手、2本目2’9.022で6番手、3本目2’8.070で2番手となり、総合8番手。三日間トータルでの総合では最終日に出した2’8.090で11番手となった。

本田重樹監督
「今回のテストからニューシャーシが投入され、初めて我々は使うことになりました。このニューシャーシを使うにあたり、各ライダーの合わせ込みという部分で、後半のテストがとても有効な三日間となりました。その中でセッティングの方向性というのは8割方見えてきています。2回目のテストにライダーは、水野 涼、PJの二人で臨んだわけですが、二人の求めるマシンの方向性、使用するタイヤの方向性というものもおおよそ固まりました。ですのでこれをもって、もう一回テストできそうなのでそこで最終確認をし、レースウイークに入っていければと考えています。現状の我々のポジションというのは、各セッションで常に上位に付けることができていて、決して悪くない位置に付けることができていると感じています。でも優勝をねらうにはもう少しアベレージを上げていかなければレースでは厳しい戦いになってしまうので、さらに各部を煮詰め、レベルアップを図りたいと思います。」

堀尾勇治チーフメカニック
「8耐の経験豊富なドミニクを1回目のテストで迎え、初投入となるニューシャーシをまず走らせました。あいにくの雨ではありましたが、まずはコミュニケーションが大事なので、そこはうまくできたと思います。ライダー的に、雨の中でもある程度幅はあるな、ということは確認できましたが、いかんせん雨の中での走行だけだったので、ドライでどうなのかという一抹の不安は正直あります。そして2回目のテストはドミニクが参加できず、PJというチームにとって新しいライダーを迎えました。水野とPJでは体格がずいぶん違うのでその点を心配していましたが、PJの方が幅があるというか、水野に合わせてくれたので、お互いにそれほど違和感なく走行することができました。初めて履くタイヤ、耐久用にセットアップされたマシンとPJにとって慣れないものばかりの中で、8割方はメニューを消化できたのではないかと思います。強いて言うならまだトップチームのレベルに達していないという現実です。でもそれは無い物ねだりをしても仕方ないので、とにかく我々の持っているパッケージの中でしっかりとパフォーマンスを発揮できるようにして、着実にステップを踏んでいくしかないわけですから、しっかりと積み重ねていきたいと思います。」

水野 涼
「今回のテストから新しいパーツが入って、そのシェイクダウンが1回目のテストとなりました。あいにくの天気でドライセッションは7月10日からの三日間のテストからとなったのですが、タイム的にも順位的にも納得できる内容ではなく、まだまらやらないといけない部分がたくさんあります。とは言え、ドライ三日目なので、そういう意味ではまずまずなのではないかという気持ちと、悔しい感情を自分の中で抑えつつ、とにかくテストをこなしているという現状です。五日間テストしましたがウエット含め、だれも転倒していませんし、後退はしていないと思います。さらにもう一回テストできそうなので、そこでしっかりとマシンを進化させていきたいと思います」

ドミニク・エガータ
「鈴鹿8耐は何度も出ているし、その中でこのチームの活躍は見てきていて、すごく良いチームだなと外から見ていたけど、実際に中に入ってみて、それを実感したテストになりました。コンディション的にはウエットで難しかったけど、マシンのポテンシャル、チームの力も確認できたのは大きな収穫だと思います。涼とポジションやマシンの擦り合わせもして、それほど問題にならないので、良いレースができると思います。」

パトリック・ジェイコブセン
「チームが温かく迎えてくれて、とても感謝しています。久しぶりに鈴鹿に戻ってきて、とても嬉しいです。テストはとても良い内容でした。ペースも自分としては良いレベルに仕上げることができたし、最後にロングランもしたけど、そこでも良いフィーリングで走れたので、レースでは高いアベレージが刻めると思います。前回の8耐の決勝の時にはコース上に遅いバイクがたくさんいて渋滞していたりととても大変だったけど、バイクの自由度が高いし、ハイペースを維持するのは難しくないと思います。来週もさらにテストができると聞いているので、そこでさらにマシンを進化させ、優勝できるレベルに持って行きたいと思っています。レースウイークに入ったらより高いレベルのプラクティス、予選、レースができると思います。レースがとても楽しみです。」