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2021シーズンの名越哲平

投稿日 : 2021.03.04 最終更新日時 : 2021.03.04

未曾有のコロナ禍でのシーズンとなった2020年を終え、いよいよ2021年の戦いが4月3日のツインリンクもてぎからスタートされる。

MuSASHi RT HARC-PRO.の名越哲平は、いよいよ全日本最高峰クラスであるJSB1000にチームのエースライダーとして臨む。名越は2019シーズンに全日本J-GP2クラスチャンピオンを獲得。翌2020シーズンはJSB1000クラスへの参戦を希望したが、マシン開発とタイトル獲得をチームから託され新カテゴリーであるST1000クラスへフル参戦。その戦いの中でさらなる成長を遂げ、大きな期待と共に念願だったJSB1000クラスの戦いを今年、迎えようとしている。

まずはその大きな成長を遂げることになった2020シーズンの戦いから振り返ってみよう。

苦しみながらも飛躍を遂げた2020シーズン

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名越が2020年に参戦したST1000クラスは、1000ccマシンをベースに改造範囲を狭くし参戦コストを抑えたカテゴリーとして新設された。そしてライディングするマシン自体もフルモデルチェンジされた新型CBR1000RR-R。マシンをゼロからセットアップし、新型 CBRをレースで戦える状態に仕上げていかなければならなかった。

そしてそのテストは、2020年3月から始まった。

名越はツインリンクもてぎ、そして鈴鹿とST1000仕様のCBRをテスト。テストは当初から順調だった。

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足回りを大幅に変更できるJSB1000に対し、改造範囲の狭いST1000クラスは基本的な仕様が決まれば後はライダーがどのようにそのマシンを走らせるかという作業になる。

名越は3月下旬の鈴鹿テストで早くも2’08’’820と9秒台を切るタイムをマークして見せた。2019年全日本最終戦鈴鹿のJSB1000クラス予選タイムに当てはめてもポイント獲得圏内に入る好タイム。さらに言えばまだマシン開発途中のタイムであり、全力アタックではなくチームから指示を受けながらマシンの動きなどを確認しながらのもの。

スタンダードでの新型CBR1000RR-Rのポテンシャルの高さ、そして初期段階でのチームの開発の順調さをうかがわせるテスト状況と言えた。

しかし、レースはなかなか思うように進まないもの。開幕戦に向けたスポーツランドSUGOの事前テストは大雨となり、名越にとって今ひとつリズムが掴みにくいこのコースで苦戦を強いられそこまでのテストで続けてきた良い流れから少しリズムを崩してしまったのだ。

結果的に開幕戦のレースを名越は3位走行中の転倒で失ってしまう。

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第2戦岡山国際は事前テストこそ走れたものの、レース自体は台風の接近によってキャンセル。第3戦オートポリスが実質の第2戦となり、そこからもてぎ、最終戦鈴鹿と行われた。

名越にとってオートポリス、もてぎ、鈴鹿は得意なコース。オートポリスで本来のリズムを取り戻し始め予選2位、決勝も2位。

しかし、名越にとってこのリザルトは満足できるものでは決してなかった。第1戦、さらに第3戦オートポリスと、最大のライバルとシーズン前から目された高橋裕紀選手が優勝。第3戦のオートポリスで名越は2位を獲得したものの、優勝した高橋選手には6秒9も差を付けられたのだ。

なんとしても次のもてぎで巻き返し、最終戦の鈴鹿は2020シーズンの集大成となるレースをしたい。

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第4戦もてぎでは、オートポリスで作った良いリズムを維持したまま走り出すことができた。雨となった予選では2番手のタイムをマーク。決勝日は一転してドライとなった。

「ドライで走った木曜、金曜のフィーリングが良かったので、とにかくその感覚を大事にしようと思いました。スタート前に本田総監督から、良いリズムで走れているから回りに合わせてレースのスタートからペースを上げるのではなく、その前のサイティングラップから集中して自分のペースを作るようアドバイスされました。その言葉通りサイティングラップから集中し、自分の走りだけに集中。スタートは先頭に出られませんでしたが、直後の3コーナーでトップに立ってからはとにかく自分のリズムで走ることだけに集中しました。」(名越)

ラストラップの90度コーナーで高橋選手が仕掛け一瞬前に出たものの、ベストラインをトレースした名越が加速で勝りそのままトップでチェッカー。待望のクラス初優勝を果たした。

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最終戦は得意の鈴鹿。もてぎ優勝の勢いのままポールtoフィニッシュ。しかも2位以下に5秒以上の差を付けての独走優勝となった。

結局2勝を挙げトップと5点差のランキング2位でシーズンを終えた。

「開幕戦の転倒がなければと回りの人には言われましたが、あのレースの中で限界域を経験できたからその後の結果が付いてきたと感じています。悔しいですがランキング2位は現状の自分の実力。でもシーズン後半、特にもてぎのレース展開での勝利は自分の中で大きな自信になりました。」と名越はシーズンを終えてコメントしている。

レースウイークの流れはパーフェクトではなかった。しかし自分の走りをすることだけに集中。力を十分出した結果、レースで勝つことができた。相手との駆け引きをする前に、まずは自分を信じ、持っている力を出し切る。この勝利で名越は大きな自信を得た。

2020シーズン、レーシングライダーにとって大きな武器となる、しかし実際はなかなか得られない『自分を信じる力』を手に入れることができたのだった。

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迎える2021シーズン

そうして2021シーズンは、いよいよ全日本最高峰クラスへのチャレンジとなる。

「自分がこのチームに入ったとき、JSB1000クラスのライダーとして高橋 巧さんがいました。エースライダーとしてチームを引っ張るその姿はとても頼もしかったし、そこに早く辿り着こうと目標にしていました。今年、その立場に自分がなるわけで、ぜひチームの若手にそうした目で見てもらえるよう相応しい結果が見せられるよう全力を尽くしたい。」と名越。

JSB1000仕様のCBR1000RR-Rは昨年のテストで何度かライディングしている。しかしそれは昨年のレースのために向けたもの、つまり水野涼仕様だった。水野のタイムには及ばなかったがそれに近いタイムは出してきている。自分に合わせたマシンになるとどうなるか、それが現状では名越にとってテストでのいちばんの楽しみな部分と言える。

「JSBのレベルの高さは十分理解していますが、世界へ挑戦するためにも2022シーズンにチャンピオン獲得を果たしたいと思います。そのためには2021シーズン、開幕戦から表彰台の常連となっていることが必須だと思います。」と決意を語る名越。

そして名越にとってもう一つ、2021シーズンの中で楽しみなのが鈴鹿8耐だ。

このレースは、チームがシーズンの中で参戦する唯一の世界選手権。MuSASHi RT HARC-PRO.は既に3度の優勝経験があり、世界中からも注目を集める。名越はこれまで同レースに3回出場しているが、いずれも他チームからの参戦でMuSASHi RT HARC-PRO.からの参戦はない。

全日本で自分が所属しているMuSASHi RT HARC-PRO.は海外からトップライダーを招聘し、自分は他チームで8耐を戦う。優勝を目指すMuSASHi RT HARC-PRO.からの参戦チャンスを、名越は憧れの目で見ながら、自分の成長の先にそれがあると信じて戦ってきた。そして今年、そのチャンスを自らの手で獲得したのだ。

厳しい戦いがそこで繰り広げられるのは名越も他チームで経験済み。しかし優勝を求められ、そのプレッシャーの中で走るのは初めてとなる。良い流れにするためにも全日本開幕戦はもちろん、その手前のテストから高い集中が必要となる。

強力なチーム力に支えられ、磨き上げてきているライディングスキルとその中で得た『自分を信じる力』。

どんな走りを今季、名越が見せてくれるか非常に楽しみだ。